AI技術が急速に進化し、タクシー業界でも需要予測やAIオンデマンド交通の活用が広がっています。「自動運転技術が普及したら、タクシー運転手の仕事がなくなるのでは……」という懸念の声もありますが、そんなことは起こり得るのでしょうか。今回は、AI技術とタクシー業界の未来についてみていきます。
タクシー業界で進むAIの活用

日本では、アメリカや中国のような完全無人運転タクシーの実現には至っていません。
しかし、AIを搭載したタクシーは活躍しており、需要予測やAIオンデマンド交通などの利用が広がっています。
特に、AIによる需要予測は効率的な配車を可能にし、乗客の待機時間を短縮するメリットがあります。
また、AIオンデマンド交通は、乗り合い型のサービスを提供し、運転手や乗客にとってより便利で迅速な移動手段を提供しています。
AIが台頭してもタクシー運転手の仕事が奪われない理由

AIや自動運転技術が発達しても、タクシー運転手という職業がすぐになくなるわけではありません。むしろ、人間の運転手だからこそ提供できる価値があります。
完全な自動運転化には多くの課題があるから
2025年1月28日にデジタル庁が発表した「自動運転の社会実装に向けた施策の取組状況、及び、今後の検討スケジュール」によると、自動運転の通信環境整備は、新東名高速道路での公道実証を2025年度中に行うという段階です。
自動運転の社会実装は各省庁が結集してのプロジェクトであり、実現までには多くの課題が山積しています。道路インフラの整備、法律の改正、通信システムの構築など、膨大な調整が必要です。
仮に各方面の整備がなされたとしても、専門家の間では、不特定のルートを走行するタクシーではなく、決まったコースを巡回する電車やバスの自動運転化が先に実現するという予測もあります。
つまり、タクシー業界はAIによる自動運転化の最終段階に位置づけられているという考え方です。
出典:デジタル庁「自動運転の社会実装に向けた施策の取組状況、及び、今後の検討スケジュール」
人間ならではのホスピタリティが重要だから
自動運転技術が進化しても、接客面では人間の運転手に明らかな優位性があります。
お客様が急いでいれば、経験と勘を活かして近道や空いている道を柔軟に選択できます。体調の悪いお客様には、揺れを抑えた運転で配慮するなど、一人ひとりに合わせた臨機応変な対応が可能です。
特に、サポートが必要な高齢者や障害のある方への細やかな気配りは、現状のAIでは実現困難な領域です。
乗車の補助や荷物の積み下ろし、会話を通じた安心感の提供など、人間ならではのホスピタリティがタクシー運転手の強みといえます。
まとめ
タクシー業界でもAI技術の活用が活発化しています。ただし、タクシーの完全自動運転化には多くの課題が残っています。
また、近道選択や体調に合わせた運転、高齢者・障害者へのサポートなど、人間の運転手ならではのホスピタリティは現状のAIでは代替困難です。人間の運転手ならではの大きな優位性を築くためにも、コミュニケーションや気配りのスキルを磨いていきましょう。